last modified: 2005/09/13
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新人賞受賞作家エッセイ
「自分の本を買ってるよ」
坂本康宏
僕は、自分の本が実際に売れているところを見たことがありません。
どんな人が僕の本を買ってくれるのでしょう。 一度でいいから見てみたいです。 もしかして、女子高生とかが買ってくれてるとむちゃ嬉しいです。 しかもその女子高生が大塚愛に似ていたりすると、モチベーションがハネ上がるでしょう。 期待は高まります。 張り込めば目撃できるかも知れませんが、一日じゅう本屋というのはあまりにツライ。
仕方がないので、本屋に立ち寄るたびに自分の本を見に行って、確認するのが習慣になりました。 地元の本屋は多めに入荷してくれますから、出版直後などは本の冊数が減っているかしげしげ確認し、余裕があるときは自ら購入したりもしてました。 はたから見ると、まったく奇異な行動です。 僕の顔は、地方の新聞やテレビに出たり、SFマガジンに載ったこともありますが、それくらいでは、誰も分からないだろうと甘く考えていました。
ところが、嫁さんが友人の結婚式に出席したとき衝撃の事実が判明したのです。 再会した友人のなかに、市内の有名書店の社員の方がいらっしゃったのですが、なんとあろうことか、彼女は嫁さんにこう言ったのです。
「あなたの旦那さん、作家さんなんでしょ。 いつもウチの店で見かけるわ」
餅は餅屋というのでしょうか。 本屋の店員さんに、僕の顔はバレバレだったのです。 ただでさえ、同じ本を2冊以上購入する異常な客なのに、「ああ、あの人、自分の本の売り上げが気になっているんだな」とか「自分の本を買ってるよこの人」とか思われていたのでしょうか。 なんともはや、穴があったら入りたいとはこのことです。
その日から、ネットで本を買うことが妙に多くなってしまいました。 人生、なかなか、思うようにはいかないものです。
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