last modified: 2005/09/13
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新人賞受賞作家エッセイ
谷口裕貴
のっけから自分のダメッぷりを晒すようで恐縮だが、小説が売れなくてどうしようもないので、バイトを始めた。
三四歳のフリーターである。 日本SF新人賞をいただく前の状態に戻っただけであるが、時間だけは経ってしまったということだ。 さいわいにも近年の不況のせいで、同年代のバイトさんは少なくないので、年齢のせいで肩身の狭いおもいをすることはない。 小説家と名のれるので、ニート扱いされることもない。 一安心である。
書店員である。
この世の中でもっともぼくが売りたいものは本であるので、時給は安いものの、それなりに楽しく働いている。
さて、日常の中のSFなできごとを書ければ、それはこの稿の理想であるとは思うのだが、残念ながら、そんなできごとなどない。 県下最大規模を誇る書店ではあっても、並べられているSFもそもそも少ない。 平谷美樹さんなんか、案の定、女性作家に分類されている体たらくである。 (平谷さんへ。ちゃんと場所は直しておきました)
ただ、先日の台風一四号で天気が荒れ狂っているとき、誤作動で防火シャッターが下りてしまうという事件があった。 たまたま現場にいちばん近くにいたので、きゅいんきゅいんという金属音とともにおおきなシャッターで行方をさえぎられていくという体験は、それなりにSFな感じがした。 『エイリアン』を連想した。
外では嵐が猛威を振るう中、店舗のなかに閉じこめられて、ひとりひとり同僚が殺されていって、恐怖と戦いながらその謎を解く、ぼく。 そんな連想までしたが、通用口があるので密室にはならなかったし、もちろんだれも殺されないのであった。
で、防火シャッターの誤作動以前のはなし。
ぼくがなぜ現場の近くにいたかというと、外は暴風雨だからだ。 暴風雨だとなぜそこにいたかというと、そこはアトリウムふうのロビーになっており、ガラス張りで外の景色が良く見えるからだ。 見えるからなぜそこにいたのかというと、従業員用駐車場に行くひとが目前を通るからだ。 つまり、強い横殴りの雨を受ける人を眺められる位置である。
ぼくと入れ替わりに帰る女の子たちが雨に襲われて、ブラジャーでも透けて見えるんではないかと期待していたのだ。
そのことをそっと同僚に話すと、ニート扱いはされない代わりに、ヘンタイ扱いされているのであった!
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